九州の雑煮における最大の調理的特徴は、丸餅を焼かずに「煮る」点にあります。東日本の角餅のように網で香ばしく焼き色をつけてから汁に入れるのではなく、別鍋の湯で柔らかく茹でるか、あるいは具材とともにすまし汁の中で直接煮て仕上げます。これにより、餅が汁の旨味を吸い込み、とろけるような滑らかな舌触りが生まれます。
地域コミュニティやSNSのリアルな声を見ても、他県出身者が最も衝撃を受けるのが熊本の「納豆雑煮」です。一見するとすまし汁に納豆が入っている光景を想像されがちですが、実際は「すまし汁で温まった丸餅をお椀から引き出し、別皿に用意した砂糖醤油やからしで和えた納豆に絡めて食べる」という二段構えのスタイルです。
加藤清正公が朝鮮出兵の際に偶然生まれたとされる肥後納豆の歴史が背景にあり、「餅の甘みと納豆の塩気・粘り気が絶妙に調和する」「一度食べるとこの食べ方以外考えられなくなる」と地元住民の間で熱烈に支持されています。