立毛筋の機能低下が深刻な影を落とすもう一つの主戦場が、毛髪を生み出す頭皮です。頭皮には全身の中で最も高密度に毛包と立毛筋が存在しており、毛髪を垂直に保持する役割を担っています。頭髪専門クリニックの臨床現場やヘッドスパサロンの現場観察を取材すると、毛髪のボリュームダウンに悩む層の頭皮には、共通して「立毛筋の機能麻痺・萎縮」が散見されます。
毛根に付随する立毛筋が健全に収縮・緊張を繰り返している状態では、髪の毛は毛穴から斜めではなく立ち上がるように生えるため、自然な根元の立ち上がりとふんわりとしたボリュームが生まれます。しかし、デスクワークによる長時間の同一姿勢や慢性疲労によって頭皮の帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)がカチカチに硬直すると、局所の血流量が低下。酸素と栄養の補給を絶たれた立毛筋は徐々に痩せ細り、毛髪を立ち上げる力を失っていきます。
この結果、髪の毛がペタリと寝てしまい、地肌が透けて見えるだけでなく、頭皮環境と抜け毛の悪循環が加速します。立毛筋は皮脂腺を物理的に圧搾して皮脂の正常な排出を助けるポンプの役割も果たしているため、その働きが鈍ると皮脂が毛穴内部に停滞し、過酸化脂質へと変化。毛母細胞にダメージを与えてヘアサイクルを狂わせる決定打となるのです。「髪のコシが急に失われた」と感じたとき、それは毛髪そのものの寿命ではなく、立毛筋のSOSサインである可能性を疑う必要があります。