ネット上の掲示板やSNSでは、「理学療法士国試 過去問を過去5年分、3周回せば確実に受かる」という言説が今なおまことしやかに語られています。しかし、このアドバイスを鵜呑みにすることは極めて危険です。
過去問演習の定番書である『クエスチョン・バンク(QB)理学療法士・作業療法士国家試験問題解説』などを活用する学習サイト「理学療法士国試エキスパート」の現場分析でも示されている通り、合格者が過去問から吸収しているのは「解答の記号」ではなく「周辺知識の解説と誤答選択肢の除外根拠」です。
厚生労働省の出題委員は、過去に出題された同一の問いをそのまま出すことはほぼありません。出題基準の改定に伴い、同一の疾患や解剖学的テーマであっても、切り口を「評価法」から「治療介入時のリスク管理」へ、あるいは「健常時のバイオメカニクス」から「代償動作の機序」へと意図的に捻ってきます。「なぜその選択肢が正解なのか」だけでなく、「残りの4つの選択肢はどこを直せば正解文になるのか」まで突き詰めて分解していない丸暗記学習者は、少し表現を変えられただけで正答に辿り着けなくなります。