『恋と嘘』の物語において、読者を最も驚かせ、かつ深く納得させたのが仁坂悠介の根島由佳吏に対する切ない感情の描写だ。表面的にはクールで容姿端麗、女子生徒からの人気も絶大な彼が、なぜあそこまで根島に対して特別な執着と優しさを見せていたのか。そこには単なる友情を超えた深い葛藤が存在していた。
コミックスや公式設定集で明かされた裏設定を紐解くと、彼の行動の端々に伏線が張り巡らされていたことが分かる。保健室でのあの決定的なシーンや、他人に心を開かない彼が根島の前でだけ見せる一瞬の隙。政府通知という絶対的な規範が存在する世界だからこそ、届かぬ想いを胸に秘めた彼の生き様は、今読んでも胸を締め付けるほどの哀愁を帯びている。