1943年9月29日に東京で生まれた林隆三は、名門として知られる俳優座養成所の第15期生出身です。同期には原田芳雄、地井武男、夏八木勲、前田吟、村野武範、栗原小巻、太地喜和子ら錚々たる顔ぶれが揃い、のちに演劇界で「花の15期」と称された伝説の世代でした。
1970年代から映画・テレビドラマで頭角を現し、新藤兼人監督の映画『竹久夢二物語 恋する』(1975年)で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞。繊細さと骨太さを兼ね備えた演技派として確固たる地位を築きました。
お茶の間に強烈な印象を刻んだのが、1985年にNHKで放送された連続ドラマ『たけしくん、ハイ!』です。ビートたけし(北野武)の少年時代を描いた同作で、林隆三は酒癖が悪く破天荒でありながらどこか憎めないペンキ職人の父親・菊次郎役を熱演。視聴率20%を超える大ヒットとなり、昭和の頑固親父像を人間味豊かに演じ切った姿は今も語り草となっています。
また、後半生において心血を注いだのが宮沢賢治の作品朗読です。1980年代半ばから『銀河鉄道の夜』『セロ弾きのゴーシュ』『注文の多い料理店』などの一人語り舞台をスタート。全国の小中学校やホールを自ら回り、ピアノ演奏を交えながら言霊を届ける活動は、生涯で1000回を超えるライフワークとなりました。