『東京ラブストーリー』を語る上で欠かせないのが、視聴者の心に深く突き刺さった数々の名セリフです。第1話のラストで放たれた「カンチ、セックスしよ!」というフレーズは、従来の受動的な女性像を打ち砕き、日本中の茶の間に鮮烈な衝撃を与えました。鈴木保奈美は下品さを微塵も感じさせない無垢な笑顔でこのセリフを放ち、リカの愛に対する純粋さと不器用さを一瞬で印象付けました。
ほかにも「ねぇ、カンチ」「ずっちーな」「好きになったら、その人しか見えなくなっちゃうんだもん」といったセリフは、恋愛における熱情と孤独を鋭く描き出しました。さらに、小田和正が歌う主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」のイントロであるギターのカッティングが、ドラマのクライマックスシーンで絶妙なタイミングで鳴り響く演出は、視聴者の感情を極限まで高める画期的な手法として確立されました。
視聴率32.3%を記録した最終回の結末は、今なお語り継がれる名場面です。愛媛県松山市の伊予鉄道高浜線「梅津寺駅(ばいしんじえき)」のホームで、電車の出発時刻より早い列車に乗り込み、柵に「バイバイ カンチ」と書かれたハンカチを残して去るリカ。そして3年後、表参道の雑踏でカンチ(関口さとみと結婚)と再会し、笑顔で別れを告げながら前を向いて歩き出すラストシーンは、ハッピーエンド至上主義だった当時のドラマ界に一石を投じ、切なくも自立した女性の生き様として人々の胸に刻まれました。