寄席の灯りがふっと落ち、出囃子が響く。高座に上がる姿勢の美しさ、着物の裁ち、そしてすっと伸びた背筋。それだけで観客は一瞬にして物語の世界へと引き込まれる。彼の根底に流れているのは、落語界の巨星・人間国宝でもあった大師匠の故・柳家小三治、そして端正かつ緻密な描写力で現代の落語界を牽引する師匠・柳家三三から脈々と受け継がれてきた直系の美学だ。
ただ師匠の真似をするのではない。言葉の間(ま)や仕草の角度一つをとっても、なぜその表現になるのかを突き詰め、己の体に深く染み込ませる。徹底した古典への敬意と研究心があるからこそ、彼の演じる長屋の住人や若旦那は、まるで目の前で息づいているかのような生き生きとしたリアリティを放つのだ。