狛治が修得していた「素流」は、弱者を守り、己を律するための拳法だった。師範である慶蔵は、犯罪に手を染めていた狛治を温かく受け入れ、武術だけでなく人としての道を解いた。しかし、正面からの勝負で敗れた隣の剣術道場が選んだのは、井戸に毒を投げ込むという卑劣な手段だった。
正々堂々と生きようと誓った真面目な人間ほど、理不尽な悪意に晒された時の絶望は深い。狛治は素手で67人もの道場関係者を殴殺するという凄惨な復讐を果たしたが、どれほど返り血を浴びても失われた命が戻ることはなかった。鬼舞辻無惨と出会い鬼となったのは、彼自身が守るべきものを失い、存在理由そのものを消失していたからに他ならない。