算数指導の現場で長年議論の的となっているのが、小学校で広く教えられている「み・は・じ(道のり・速さ・時間)」の公式円(テントウムシの図)の功罪です。ネット上の教育相談では「みはじを使えば簡単に解ける」という意見が散見されますが、難関指導のプロの間では「みはじへの過度な依存が旅人算での壊滅的な挫折を招く」というのが常識です。
「みはじ」の図は、単に「速さ=道のり÷時間」という除法の関係を視覚的な位置関係で暗記させているにすぎません。そのため、以下のような致命的な誤解と学習障害を引き起こします。
- 単位換算の無視:時速と分速、kmとmが混在した問題で、数字だけを図に放り込んで「8km÷分速200m=0.04」のような無意味な計算をしてしまう。
- 相対速度の不理解:動く対象が2人になった瞬間、分母に「Aの速さ+Bの速さ」を置く論理的理由が理解できず、手が止まる。
- 思考停止の誘発:「何を何で割っているのか」という物理的なイメージを持たないため、ケアレスミスに自ら気付くことができない。
速さの本質とは「単位時間(1分や1時間)あたりに進む距離の割合」です。旅人算を攻略する上で最初に行うべき指導は、「みはじ」の丸暗記を捨てさせ、「1分で何メートル進むのか」「2人合わせると1分で何メートル縮まるのか」という具体的な実感を伴った言葉で立式させることに尽きます。