卵のパックを開けると、すべての卵が同じ向きで綺麗に並んでいることに気づくはずです。これには鶏卵産業が長年培ってきた品質保持のノウハウが凝縮されています。
卵を置く際に尖った方を下にする理由は、卵の構造にあります。丸みを帯びた太い方の端には「気室(きしつ)」と呼ばれる空気の部屋が存在します。尖った方(鋭端)を下にして丸い方(鈍端)を上に配置すると、気室が上部に保たれ、比重の軽い黄身が浮き上がっても気室の空気層がクッションとなって殻の内膜に直接接触するのを防いでくれます。もし上下を逆にしてしまうと、黄身が直接殻に触れて細菌感染や品質低下を招くリスクが跳ね上がります。
また、調理前に殻の汚れが気になっても絶対に水洗いしてはいけません。卵を洗わない理由と気孔のメカニズムを知るとその危険性がよく分かります。卵の殻には「気孔(きこう)」と呼ばれる微細な穴が約7,000〜17,000個も開いており、ヒヨコが呼吸するためのガス交換を行っています。市販の卵は、出荷時に「クチクラ(Cuticle)」という天然の保護膜を可能な限り残す特殊な温水洗浄・殺菌工程を経てパッキングされています。
家庭の水道水でジャブジャブと洗ってしまうと、このクチクラ層が破壊されるだけでなく、気孔を通じて殻表面の水分や雑菌が浸透圧によって内部へと一気に吸い込まれてしまいます。どうしても汚れが気になる場合は、洗うのではなく清潔なキッチンペーパーなどで乾拭きする程度に留めましょう。