当時の制作関係者は、スタジオでの谷本のストイックさと人柄をこう振り返る。パペットたちとの掛け合いは、声優や人形操演者との息が完全に一致しなければ成り立たない過酷な現場だった。人形が本当に生きているかのように自然に視線を交わし、アドリブの掛け合いに即座にメロディで返す瞬発力。それは生半可な技術でできることではない。
「NGを出して現場がピリッとしたときも、谷本さんがギターをぽろんと鳴らして鼻歌を歌うだけで、張り詰めた空気が一瞬で和んだ。スタジオ全体が、本当にあの古書店のような優しい場所になっていたんです」と元スタッフは明かす。飾らない素顔の彼がいたからこそ、奇跡のようなアンサンブルがフィルムに焼き付けられた。