東京の東側、神田や日本橋に隣接する馬喰町エリアは、近年古いビルを再生したアートギャラリーや高感度なホテル、カフェが集積する注目のカルチャースポットへと変貌を遂げました。その変革を牽引してきたパイオニア的存在が「北出食堂」です。
オーナーシェフの北出勝久氏は、ニューヨーク・ブルックリンの名店で修行を積み、現地のダイナー文化や多様な食のミクスチャー感覚を体得した人物です。帰国後、2013年にオープンした北出食堂において、単なる本場メキシコ料理の模倣でも、アメリカナイズされた大衆的なテックスメックスでもない、「日本人の感性と日本の食材で再構築したクラフトタコス」という独自のジャンルを打ち立てました。
最大の差別化要素は、輸入トウモロコシの粉に頼らず、北海道産の遺伝子組み換えでない契約栽培コーンを100%使用し、店舗で毎日仕込む自家製トルティーヤにあります。石臼で挽いたトウモロコシをアルカリ処理する伝統製法「ニシュタマリゼーション」を踏襲しつつ、添加物を一切使わずに焼き上げる生地は、噛み締めるほどに穀物本来の芳醇な甘みと香りが口いっぱいに広がります。
木材の温もりとインダストリアルな質感が調和した店内は、オープンキッチンから立ち上る熱気と活気にあふれています。身体に優しい安心な素材選び、職人技が光る手作りの味、そして居心地の良い空間設計という3つの要素が完璧に調和していることこそが、感度の高い大人の心を掴んで離さない理由です。