名門一族の出身であり、学習院大学を卒業して海外留学経験も持つ麻生氏が、なぜこれほどまでに基本的な漢字を読み間違えてしまったのか。政治記者や側近たちの証言からは、3つの客観的な要因が浮かび上がってきます。
ひとつ目は、「官僚作成の答弁書(ペーパー)へのルビなし対応」です。歴代の内閣総理大臣の多くは、官僚が細かくルビを振った答弁書を一字一句違わずに朗読していました。一方、麻生氏は自身の言葉で堂々と語るスタイルを好んだため、官僚が用意した難解な官公庁用語が並ぶ原稿にルビを振らせず、流し読みしながら即興で喋ろうとした結果、空目や読み間違いが多発しました。
ふたつ目は、リーマン・ショック直後の極度の激務と睡眠不足です。世界同時不況の震源地となった2008年秋、麻生内閣は矢継ぎ早の追加経済対策や国際会議(G20ワシントン・サミット)への出席に追われていました。過密日程による集中力の低下が、視認ミスを誘発した側面は否定できません。
みっつ目は、「視覚的な直感で言葉を捉える認知の癖」です。麻生氏は速読派として知られ、膨大な資料に素早く目を通すタイプでした。そのため、前後の文脈や漢字の雰囲気からパッと直感で言葉を紡ぎ出す傾向があり、熟語の正確な音訓の組み合わせを確認せずに発音してしまったと分析されています。