『クイズ!ヘキサゴンII』の全盛期、番組が生み出した「おバカブーム」は社会現象でした。島田紳助氏が主導したプロデュース戦略は、単に知識がないことを笑うのではなく、純粋さや一生懸命さ、仲間同士の結束感を前面に出すことで視聴者の共感を誘いました。羞恥心やPaboによる『陽は、また昇る』や『泣いてもいいですか』といったヘキサゴン発のユニット曲がオリコンチャート上位を独占したのは、そうした人間ドラマが背景にあったからです。
しかし、2010年代半ばから2026年代にかけて、テレビを取り巻く環境と視聴者心理は構造的な変化を遂げました。現場のテレビ制作者やメディアアナリストの分析によると、以下の要因がおバカブームの終焉を決定づけました。
第一に、SNSの普及による「コンテクストの透明化」です。テレビ画面の中だけで完結していた時代は「番組内のキャラクター」として許容されていた言動が、SNS上で切り抜かれ、個人の知性やモラルとして直接批判の対象となる時代に入りました。計算された珍解答や無知の誇示は、現代のデジタル空間ではリスクファクターへと変貌したのです。
第二に、ジェンダー観とコンプライアンスのアップデートです。かつて平成のバラエティで頻繁に見られた「無知な若い女性を男性MCがいじる」という構図は、現代の視聴者倫理において敬遠される傾向が顕著になりました。視聴者が求めるのは「無邪気な無知」ではなく、「困難を乗り越える知恵」や「リカレント教育による自己成長」へと明確にシフトしています。