もちろん、明るい話題ばかりではない。近年の卵価格の急騰や、輸入バター・小麦粉の価格高騰は、洋菓子業界全体に深刻な影を落としている。卵を大量に使用するシュー生地は、コスト面で最も打撃を受けやすい部類に入る。
それでも店舗が提供を止めないのは、顧客が求める「体験の質」が変化したからだ。単にお腹を満たすためではなく、質の高い1個をじっくりと味わう。価格が上がっても、それに見合う職人の技術と最高の素材が投入されていれば、消費者は惜しみなく財布を開く。1個数百円の小さな輪っかに込められたクラフトマンシップが、価格競争とは無縁の独自の価値を築いている。