19世紀末のアトランタ。南北戦争の荒廃から復興へと向かう熱気の中で、ペンバートンは自身の薬局「ペンバートン・ケミカル・カンパニー」の研究所で日夜、新しい強壮剤の開発に没頭していた。当時、アメリカ社会には疲労回復や神経痛に効くとされる様々な「自家製パテント・メディスン(特許薬)」が出回っていた。
彼が最初に注目したのは、当時ヨーロッパの上流階級で大流行していたコカ葉とワインを組み合わせたドリンクだった。フランス発祥の「マリアニ・ワイン」に感銘を受けた彼は、自らのアレンジを加えた「フレンチ・ワイン・コカ」を売り出し、地元で一躍評判を呼ぶことになる。しかし、歴史の歯車は思わぬ方向へと旋回する。1886年、アトランタとフルトン郡で禁酒法が施行されたのだ。