「公園で転びそうになった子どもの手をキュッと引き上げただけなのに、火がついたように泣き止まなくなった」「おもちゃを取り合って腕を引っ張った後、右手をまったく使おうとしない」。小児科や整形外科の救急外来には、毎日このような切迫した相談が寄せられます。受傷直後の子どもは、腕を身体の横にだらんと下げ、手のひらを内側(下向き)に向けたまま、肘をわずかに曲げた不自然な姿勢で固まるのが典型的なサインです。
コミュニティサイトやSNSの育児コミュニティを分析すると、受傷時に親が抱く感情の第一声は「強い自責の念」です。「自分の引っ張り方が強すぎたせいで脱臼させてしまったのではないか」「虐待を疑われるのではないか」と思い詰め、パニックに陥るケースが目立ちます。しかし、現場の整形外科医が口を揃える通り、肘内障はごくわずかな牽引力や、寝返りで腕を巻き込んだ程度でも発生する解剖学的な通過点であり、保護者の過失を責めるべき事象ではありません。
焦るあまり、親が子どもの腕を無理に引っ張ったり捻ったりして自力で治そうと試みる事例が後を絶ちませんが、これは最も避けるべき初動対応です。痛みの原因が肘内障なのか、それとも鎖骨や前腕の不全骨折(若木骨折)なのかを外見だけで判別することは、経験豊富な医師であっても慎重な触診を要するためです。