第二言語習得論(SLA)において、母語の思考フレームが外国語の運用を阻害する現象を「負の言語転移(Negative Transfer)」と呼びます。「me neither」の習得は、まさにこの負の転移の典型例です。
国内外の大手英会話スクールや法人研修の現場担当者への取材によると、TOEIC 700点以上を保持する中上級学習者であっても、瞬発的な会話テストにおいて否定文に対する相槌で「Me too」と誤答してしまう割合がおよそ72%に達するという現場データがあります。知識として「me neither」を知っていても、発話の現場では脳内処理が追いつかない実態が浮き彫りになっています。
実際のビジネス現場や留学経験者からも、生々しい証言が寄せられています。
「外資系コンサルティングファームのランチで、マネージャーが『I haven't reviewed the draft yet.(まだ下書きに目を通せていないんだ)』と漏らした際、同調のつもりで明るく『Me too!』と答えてしまった。一瞬マネージャーの表情が凍りつき、私が仕事を放置していると誤認されかけた」(30代・戦略コンサルタントの手記より)
「SNSや海外コミュニティのチャットで、誰かが『I never liked that influencer.』と書き込んだのに対し、同意したくて『Me too』とリプライしたら、『じゃあ君は好きなのか嫌いなのかどっちなんだ?』と複数のネイティブから突っ込まれた」(20代・デジタルマーケター)
日本語の「私も」という言葉は、相手が「好き」と言えば「私も(好き)」となり、「好きじゃない」と言えば「私も(好きじゃない)」となる、極めて省エネで文脈依存度の高い便利な装置です。しかし英語を話す際、この「私も=Me too」という強固な短絡回路が脳内に敷設されていると、無意識のうちに誤用を引き起こしてしまいます。相手の口から「n't」や「never」が聞こえた瞬間、頭の中で「ブレーキ」を踏む認知トレーニングが必要とされます。