呼出の真骨頂は、本場所の開幕直前に行われる「土俵築き」にある。力士たちが命を削り合ってぶつかり合うあの直径4.55メートルの勝負俵の内側は、呼出の手によってゼロから創り出されているのだ。
場所前、運び込まれるのは約60トンにおよぶ粘り気のある「荒木田土」。重機など一切入らない。使うのは木製のタコ(叩き棒)や叩き板、そして手作業のスコップだけだ。呼出総出で水を打ちながら土を幾層にも積み上げ、ひたすら叩いて空気を抜き、岩のように堅牢な土台を築き上げる。最後の仕上げには、空のビール瓶を使って表面を滑らかに磨き上げるという驚くべき伝統技法が用いられる。
足の裏で土の水分量を感じ取り、季節や湿度に応じて叩く回数を変える。力士が滑らず、かつ怪我をしない絶妙な硬度を保つ土俵は、呼出の長年の勘と過酷な肉体労働の結晶なのだ。