レコード史において、『車屋さん』は極めて興味深い立ち位置にあります。1962年にシングル盤として正式リリースされた際、この曲は日本レコード大賞歌唱賞に輝いた大作『ひばりの佐渡情話』のB面(カップリング曲)として収録されました。当時の歌謡界では異例とも言える、A面とB面の極端なコントラストを比較検証してみましょう。
同一のアナログ盤の表と裏に、これほど振れ幅の大きい2曲を並べ、しかも双方を完璧な水準で歌い切れる歌手は、世界中を探しても美空ひばりをおいて他には見当たりません。A面で聴衆を涙させ、B面で快活に笑わせる――この多面性こそ、彼女が国民的歌手と呼ばれた根拠です。