プリンセス天功が世界的な名声を決定づけた契機は、1990年代半ばのアメリカ進出でした。大手玩具メーカーのマテル社が彼女をモデルにしたアクションドールを発売し、彼女自身が主演するアニメ『PRINCESS TENKO AND THE GUARDIAN OF THE MAGIC』が全米で放映されたことで、彼女は全米の子供たちにとって本物のスーパーヒロインとなりました。
しかし、その巨大ビジネスの裏には、個人の自由を完全に制限する驚くべき契約条項が存在していました。テレビ番組や過去のインタビュー手記で本人が明かした主な契約内容は以下の通りです。
- 外見の固定:黒髪ストレート・前髪パッツンの髪型を維持し、髪色の変更や大幅なカットは一切禁止。
- 体型の厳格管理:アニメキャラクターのイメージを損なわないため、体重の増減は契約で定められた範囲内(プラスマイナス数ポンド以内)に収める。
- 私生活の統制:公の場で男性と手をつないで歩くことや熱愛報道は厳禁。実年齢や本名を明かすことも禁忌とされた。
- 金銭感覚の遮断:スーパーマーケットでの買い物や現金の直接所持が禁じられ、すべての決済はマネージャーや専用カードを介して行われた。
- 東西の神秘性の維持:東洋の神秘的なプリンセス像を守るため、電車やバスなどの庶民的な交通機関の利用は契約違反と見なされた。
これらの条項は、アメリカにおける「キャラクターIP(知的財産)」としての価値を極限まで高めるための措置でした。人間としての生活をかなぐり捨て、24時間365日「プリンセス・テンコー」を演じ切るという、過酷なプロ意識が求められたのです。