糸満漁民食堂を語る上で絶対に外せない看板メニューが、注文率の大半を占める魚のバター焼き定食です。一般的な沖縄の大衆食堂で見られるバター焼きといえば、マーガリンやニンニクを効かせた豪快な炒め揚げが定番ですが、同店のアプローチは一線を画しています。
まず目を引くのが、店頭の黒板にずらりと並ぶ「本日の水揚げ魚」のラインナップです。タマン(ハマフエフキ)、ミーバイ(ハタ類)、グルクン(タカサゴ)など、糸満漁港から仕入れた獲れたての魚が、サイズと重さごとに明記されています。注文が入ってから一尾丸ごとカリッと香ばしく素揚げし、ジュージューと音を立てる特製鉄板に載せて運ばれてきます。
さらにリピーターを唸らせるのが、好みに応じて選べる自家製オリジナルバターソースの存在です。
- アーサバター:県産あおさの豊かな磯の香りと上質なバターのコクが魚本来の甘みを引き立てる一番人気。
- ガーリックバター:食欲を強烈に刺激する王道の組み合わせ。パンチの効いた旨味が白米との相性を極限まで高める。
- 豆腐ようバター:沖縄の伝統発酵食品「豆腐よう」特有の芳醇な風味と塩気が溶け込んだ、大人のための通好みな仕上がり。
味わい方にも独自の作法が存在します。まずは運ばれてきた直後、外側はパリパリ、中は驚くほどふっくらとした白身をソースなしで一口。次に、熱々の鉄板上で沸き立つバターソースをスプーンですくい、香ばしい皮目と柔らかな身にたっぷり絡めて堪能します。そして締めくくりには、鉄板に残った濃厚な魚の出汁とバターをご飯の上にかける、あるいはご飯を鉄板に投入して即席のガーリックライス風に仕立てるのが、現地で語り継がれる至高の食べ方です。