街道の要所や村境に位置する一本の古木、あるいは道が三方に分かれる辻褄の合わない場所を指す「三本枝」。この地を舞台に語り継がれる三本枝のかみそり狐 あらすじは、人間の慢心と化け狐の知恵比べから幕を開けます。
ある日、近隣の村に住む腕自慢で口達者な男が、「世の中に人を化かす狐などいるものか。もし出遭ったら逆に懲らしめてやる」と周囲に豪語し、夕暮れ時に三本枝の通りへと出かけていきます。薄暗い街道を進むと、そこには見慣れない小奇麗な茶屋があり、艶やかな美女や親切な床屋(髪結い)が現れて男を手厚くもてなします。
「長旅でお疲れでしょう。頭を整えてさっぱりなさいませんか」
男は極上の酒ともてなしに気を良くし、心地よい気分のまま身を任せます。心地よい刃物の感触とともに微睡(まどろ)みの中へ落ちていく男。しかし、ふと目が覚めると周囲の景色は一変していました。華やかな茶屋も美女の姿も跡形もなく、男が寝転がっていたのは冷たい泥水がたまる藪の中だったのです。
慌てて自分の頭に手をやった男は絶叫します。自慢の髷は見事に刈り取られ、頭頂部から側頭部まで見事なまでに滑らかな「丸坊主」に仕立て上げられていました。手元に残されていたのは、剃刀の刃ではなく薄っぺらな木の葉と泥団子。これが語り草となった三本枝のかみそり狐 結末の決定的な瞬間です。この怪異を成した主こそが、人々から化け狐 妖怪として畏れられた三本枝の主でした。