フジテレビジョンで数々の伝説的ドラマを世に送り出し、日本を代表する映画監督として確固たる地位を築いた西谷弘。彼の映像美学の根底にあるのは、人間の多面性に対する底知れぬ探求心だ。単なる善悪の二元論に落とし込まず、理屈では割り切れない情念の揺らぎを丁寧にすくい取る。
その真骨頂が発揮された代表作の一つが『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』だ。日常に潜む禁断の情愛を、叙情的なカメラワークと息をのむような緊迫感で描き出し、社会現象を巻き起こした。東宝配給で公開された劇場版では、救いのない運命に翻弄される登場人物たちの結末を生々しく切り取り、日本映画界に強烈な爪痕を残した。