ドラムセットの中で最も叩かれる頻度が高く、ドラマーの「名刺」とも呼ばれるのがこの楽器だ。過酷なドラム練習と指導者の狂気を描いた映画『セッション』でも描かれた通り、たった一発の打ち込みに込められたタッチの違いが、音楽全体を破滅にも至高の瞬間にも導く。
ドライブ感あふれる骨太なロックのバックビートから、息をのむほど繊細なタッチが要求されるジャズのゴーストノートまで、求められる表現領域は果てしなく広い。シェル(胴)の材質、口径や深さ、フープの形状によって、甘く太い音から雷鳴のような鋭い響きまで表情を激変させる。だからこそ、プレイヤーは自らの理想とするサウンドを追い求め、終わりのない機材探求へと旅立つのだ。