騒動をさらに複雑化させ、関係者の間に波紋を広げたのが、新たなテナントの誘致計画だった。建て替え後のフラッグシップホテルであるThe Okura Tokyoのメインエリア側には、久兵衛とは異なる新鋭の最高級鮨店として「鮨 かねさか」が出店を果たすことになったのだ。
銀座久兵衛 オークラ店がアーケードエリアへの配置となったのに対し、ミシュランの星を獲得し海外富裕層からも絶大な支持を集める「鮨 かねさか」が主要エリアに座を占めたことは、大きな驚きをもって受け止められた。これは単なる個別の店舗配置の問題にとどまらない。
現代のラグジュアリーホテル業界においては、世界基準のトレンドやインバウンド客の動向に合わせたダイニングポートフォリオの再編が急速に進んでいる。老舗の威光だけに頼るのではなく、国際的な評価や多様な客層のニーズに合致したブランドを誘致するホテルの冷徹な戦略が、このドラマの背景に存在していたのである。