『錨を上げて』が持つ生命力は、実際の現場に立つ奏者や現代の鑑賞者の生々しい反応からもうかがい知ることができます。
吹奏楽の現場では、海上自衛隊音楽隊の定例演奏会や全国の市民吹奏楽団のステージにおいて、「アンコールの鉄板ナンバー」として確固たる地位を築いています。実際にトロンボーンを担当する社会人奏者からは、「中盤の爽やかなカウンターメロディと、ラストに向けて押し寄せる金管セクションのダイナミズムは、吹いていて鳥肌が立つほど楽しい」という声が聞かれます。一方で、木管楽器の連符の細かさや6/8拍子の軽快なノリを維持する難しさを指摘する指導者も多く、単なる易しい行進曲に留まらない合奏の基礎体力が試される楽曲でもあります。
一方、映画ファンのコミュニティやSNS上では、ジーン・ケリーの人間離れしたフィジカルに対する驚嘆が目立ちます。「現代の洗練されたVFXに見慣れた目で見ても、影の落ち方や視線の交錯など、ジェリーとケリーが同じスタジオで呼吸しているようにしか見えない」という投稿が後を絶ちません。約80年前のアナログ技術の粋を集めた映像は、デジタルネイティブの鑑賞者にとっても、CGとは一線を画す「血の通った手仕事の凄み」として強烈な説得力を持っています。