京都の報恩寺が誇る至宝といえば、国指定重要文化財に指定されている「鳴虎図(なきとらず)」です。中国・四條法橋の筆と伝わるこの掛け軸には、今にも画面から飛び出してきそうな躍動感あふれる虎が描かれています。
この名画には有名な伝説が残されています。天下人・豊臣秀吉がこの虎の絵を所望して聚楽第に持ち帰ったところ、夜な夜な絵の中から虎が猛々しく鳴き声を上げ、秀吉は恐れおののいて寺へ返納したと伝えられます。この逸話から「鳴虎」の名が定着し、現在に至るまで寺の象徴として語り継がれてきました。
鳴虎図は保存の観点から常時展示は行われておらず、正月三が日や秋の「京都非公開文化財特別公開」などの限られた機会にのみ特別公開されます。間近で鑑賞できる特別公開の時期には、絵肌の細密な毛並みや鋭い眼光を一目見ようと、多くの美術ファンや歴史愛好家が詰めかけます。
また、境内には秀吉ゆかりの「撞かずの鐘(志慶の鐘)」や、千利休遺愛の硯など、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての貴重な文化財が数多く残されており、京都の奥深い歴史の厚みを肌で体感できます。