塩沢さんのキャリアにおいて、シリアスな二枚目路線と対極をなす代表作が『クレヨンしんちゃん』のぶりぶりざえもんです。「私は常に強い者の味方だ」「お助け料1億万円」といった名フレーズを極上の美声で言い放つシュールな救いのヒーローは、作品屈指の人気キャラとなりました。
塩沢さんの急逝後、制作サイドと原作者の臼井儀人氏は「塩沢さん以外の声は考えられない」と判断。キャラクターを消滅させるのではなく、アニメ本編に登場しても「セリフを一切喋らない(息づかいや文字のみ)」という形で16年間もの長きにわたり声を封印する異例の措置が取られました。
その封印が解かれたのは2016年。後任として抜擢されたのが実力派声優の神谷浩史さんでした。青二プロダクションの後輩として塩沢さんを深く尊敬していた神谷さんは、偉大な先人のニュアンスを徹底的に研究しつつ、自らの演技で新たな息吹を吹き込みました。長年のファンからも「塩沢さんへの敬意が伝わる素晴らしい演技」と称賛され、キャラクターの命は見事に未来へと繋がれました。