疑問として浮かび上がるのが、「なぜこれほど極端な差が放置されているのか」「明石海峡大橋なぜ安い理由はどこにあるのか」という点です。単なるETC普及促進キャンペーンの枠組みを遥かに超えた割引率には、本州四国連絡橋が歩んできた苦難の歴史と国家的な交通政策が深く関係しています。
1998年(平成10年)の開通当初、明石海峡大橋の普通車料金は片道2,600円(当時の消費税5%込)に設定されていました。巨大な海峡横断プロジェクトに投じられた建設費用は橋単体でも数千億円規模に上り、償還のための高コスト料金設定はやむを得ない措置とされていました。しかし、この高額な通行料がネックとなり、開通初期の交通量は当初予測を大きく下回り続けました。
転機となったのは、2000年代後半から始まった高速道路料金の抜本的な引き下げ政策です。民主党政権時代の「上限1,000円」社会実験を経て、国土交通省と本四高速は2014年(平成26年)4月、新たな料金体系を導入しました。首都高や阪神高速、NEXCO各社との料金整合性を図ると同時に、離島振興法に基づく淡路島の定住自立圏構想、関西圏と四国を結ぶ物流幹線としての実効性を高めるため、ETC車限定で「全国路線網並み」の低廉な水準まで引き下げる政策的断行が行われたのです。
料金所での現受払い業務を縮小して人件費や維持管理コストを圧縮する狙いも重なり、割引原資には国や自治体の財源が投入されています。現金を支払うドライバーにペナルティを課しているというよりは、「多額の公的支援によって支えられている超低額料金の恩恵を、スマート管理に協力するETC車に限定して還元している」というのが構造的な真相です。