学術的に自覚夢(Lucid Dream)とも呼ばれる明晰夢は、睡眠状態にありながらメタ認知(自分自身の状態を客観的に認識する認知機能)が働いている特殊な意識状態を指します。一般的な夢では、どんなに荒唐無稽な出来事が起きても目覚めるまで違和感を抱きません。しかし明晰夢では、「自分は今、ベッドの上で眠りながら夢を見ている」という明確な自覚が存在します。
この現象の鍵を握るのが、急速な眼球運動を伴い脳が活発に活動しているレム睡眠です。認知神経科学の研究データによると、通常のレム睡眠中は論理的思考や自己批判を司る「背外側前頭前皮質(DLPFC)」の活動が低下しています。しかし明晰夢の発生時には、この背外側前頭前皮質にガンマ波帯(約40Hz)の脳波活動が確認され、睡眠中にもかかわらず脳の一部が覚醒時と同等の高度な意識レベルを取り戻していることが判明しています。
つまり、明晰夢とはオカルト的な超能力ではなく、「脳の論理中枢が部分的に目を覚ましたまま、夢の生成プロセスを観察・干渉している状態」という脳科学的な理由によって説明される現象です。