北村総一朗の真骨頂は、その極めて堅牢な演技の基礎にある。名門として知られる「劇団昴」の立ち上げメンバーの一人として、シェイクスピア劇をはじめとする数々の名作舞台で鍛え上げられた確固たるメソッド。朗々たる美声と緻密な心理描写力は、舞台空間で徹底的に磨かれたものだ。
劇団昴で培った重厚なリアリズムは、日本のテレビドラマ界へ進出した際にも強烈な武器となった。単なる善人や悪人にとどまらない、人間の複雑な内面を浮き彫りにする演技。特にサスペンス・ミステリーのジャンルにおいては、冷徹な黒幕から温厚な学者、苦悩する父親まで変幻自在に演じ分け、視聴者を物語の世界へぐいぐいと引き込んできた。
彼が出演するだけで画面が引き締まり、物語の説得力が何倍にも跳ね上がる。骨太な演劇精神をテレビの世界へと持ち込み、大衆エンターテインメントの質を底上げした功績は計り知れない。