古尾谷の表現の原点は、少年期に在籍した劇団ひまわりに遡る。幼い頃から芝居の基礎を叩き込まれ、188センチという当時としては破格の高身長と彫りの深い顔立ちで早くから注目を集めた。だが、彼が何より重んじたのは外見的な華やかさではなく、泥臭いまでのリアリズムだった。
1992年の映画『宇宙の法則』(大森一樹監督)では、バブル崩壊後の社会で人生の岐路に立たされる男を演じ、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞にノミネートされるなど高い評価を獲得。同世代の役者たちがスタイリッシュさを追求するなか、古尾谷は常に市井の人々の哀愁や痛みを背負い続けた。
現場では共演者やスタッフに対して誠実そのものであり、自らの出番がないシーンでもセットの片隅から芝居を見守る熱心さを見せていた。映画作りに携わるすべての人への敬意を失わない姿勢が、多くの映画人から深く愛された理由でもあった。