石立鉄男さんの俳優人生を語る上で欠かせない代表作が、1972年から日本テレビ系で放送されたホームドラマの傑作『パパと呼ばないで』です。妻を亡くした姉の忘れ形見である幼い姪「チー坊」を引き取り、下宿先の人情味あふれる人々と共に手探りで育てる独身男・安武右精役を熱演。「おい、チー坊」と呼びかける切なくも温かい口調は、当時の流行語にもなりました。
当時わずか7歳でチー坊役を演じたのが杉田かおるさんです。杉田さんは後年、石立さんを「芸能界における真の育ての親」と振り返っています。撮影現場での石立さんは子役扱いを一切せず、挨拶や現場での立ち振る舞い、台本を完璧に頭に入れて挑むプロとしての責任感を厳しく指導しました。
その一方で、カメラが回っていない場所では人一倍の愛情を注ぎました。大人たちの都合で過密スケジュールに追われがちだった幼い杉田さんを守るため、スタッフに休憩を促したり、誕生日には心のこもった贈り物を手渡したりと、劇中さながらの深い絆を築いていました。石立さんの訃報に接した際、杉田さんが「本当のお父さんを亡くしたような喪失感」と涙ながらに語ったエピソードは、二人の間にあった本物の信頼関係を物語っています。