歴史を1717年のロンドンに巻き戻そう。パブ「グース・アンド・グリディアン」に集まった4つのロッジが合流し、近代フリーメイソンが誕生した。石工の職人組合(オペレーティブ・メイソン)が、思想家や貴族を受け入れる思弁的(スペキュレイティブ)団体へと変貌を遂げた瞬間である。
その総本山である「ユナイテッド・グランドロッジ・オブ・イングランド」は、現在も世界各地の正規ロッジを承認する権威として君臨する。彼らが掲げたのは「兄弟愛、救済、真理」。宗教的対立が血で血を洗っていた時代に、信仰の壁を越えて理性を重んじる知識人のネットワークとして機能した。世界支配の秘密結社というよりは、啓蒙思想を実践するためのエリートサロンだったと言える。