「げんを担ぐ」という言葉のルーツを辿ると、江戸時代の市井の人々が使っていた隠語(業界用語)に行き着く。元々は仏教用語である「縁起(えんぎ)」が由来だ。江戸の町人や役者たちの間で、吉凶を気にする言葉遊びとして「えんぎ」の音を逆さまにした「ぎえん」という倒語が生まれた。これが時代とともに変化し、言葉の末尾が削られて「げん」となり、良い縁起を自分の肩に「担ぐ」という表現へと繋がったとされている。
日本には古来より言葉その物に神秘的な力が宿ると信じる「言霊」の思想が存在する。伝統的な神社本庁が守り伝える神道の世界観でも、発する言葉や日々の立ち振る舞いが現実に影響を与えると考えられてきた。「げん担ぎ」は、そうした日本独自の精神的土壌が生み出した、極めて論理的な「前向きな自己暗示」の文化なのである。