スタジオジブリ作品、とりわけ宮崎駿監督作品では、専業声優よりも舞台俳優や映画俳優が重用される傾向が顕著です。『もののけ姫』においてもその方針は徹底されていました。
宮崎監督は、当時のアニメ界で定型化しつつあった「いわゆるアニメ声」や、台詞を記号的・誇張して表現する演技スタイルを強く嫌悪していました。求めたのは「生活の匂いがする生々しい肉声」や「台詞の裏にある感情の揺らぎ」です。
声だけで器用に演じ分ける技術よりも、本人の肉体から発せられる人間性そのものをフィルムに焼き付けるため、あえて声優経験の少ない実力派俳優をオーディションで選び抜きました。その結果、20年以上経っても古びることのない、普遍的なリアリズムを持った台詞の数々が誕生したのです。