東京や大阪の主要エリアを歩けば、風景そのものが巨大なキャンバスへと変貌していることに気づく。ウェアラブルデバイスやスマートフォンのカメラをかざすと、普段見慣れたビルの壁面から立体的なデジタルアートが飛び出し、歩行者同士が同じ拡張現実を共有する「空間連動型イベント」が日常の風景となった。
一方で、デジタル技術の浸透に対する揺り戻しとして、限定的なリアル空間での生の体験に対する熱狂も加速している。SNSでの事前告知を意図的に伏せ、当日朝に公式アプリでのみ場所が明かされるゲリラ個展や、2時間限定のクリエイターマーケットには、感度の高い人々が次々と吸い寄せられていく。リアルと仮想空間がシームレスに交差する今、参加者に求められているのは単なる鑑賞ではなく、「その瞬間の空気感を共有する」という切実な体験だ。