学校英語の定番である「It was fun.」ですが、ネイティブスピーカーが受け取るニュアンスの芯は「(その催しやアクティビティが)娯楽的・遊興的に面白かった」という客観的な観察です。主語が「It(その出来事)」であるため、話者本人の感情の揺れ動きが前面に出にくく、どこか冷めたレビューのような響きを帯びることがあります。
例えば、大人の落ち着いたディナーデートや、お互いの人生観をじっくり語り合った夜の別れ際に「It was fun!」とだけ伝えると、相手は「まるでテーマパークのアトラクションに乗った感想みたいだな」と拍子抜けしてしまうケースが少なくありません。退屈ではなかったものの、深く心を動かされたわけではないというニュアンスに捉えられかねない点が最大の盲点です。
さらに致命的なのがビジネスシーンです。取引先との会食やクライアントを招いた懇親会の翌日に「Yesterday's dinner was fun!」とメールを送ってしまうと、「遊び感覚で参加していたのか」とプロフェッショナリズムを疑われるリスクが生じます。日本語の「楽しかったです」が持つ幅広い敬意や充実感をそのまま直訳してはいけない理由がここにあります。