数年前まではエントリーからミドルレンジを中心に豊富に存在していたトリプルスロット機ですが、なぜここまで姿を消したのでしょうか。業界の構造変化を探ると、3つの決定的な理由が浮かび上がってきます。
最大の要因は、eSIM(組み込み型SIM)の急速な普及です。通信キャリアやMVNO各社がeSIM対応を標準化したことで、メーカー側は物理的なSIMトレイを2つ用意する必要性が薄れました。「物理nanoSIM+eSIM」の構成にすれば、トレイ側は「nanoSIM+microSD」の2スロット(またはmicroSD専用スロット)だけで済むためです。
2つ目は、本体の薄型化・防水防塵性能(IP68等)の向上に伴う物理スペースの制約です。トリプルスロット用のカードトレイは面積が広く、内部基盤のスペースを圧迫します。大容量バッテリーの搭載や排熱設計、防水パッキンの配置を優先するフラッグシップや薄型端末ほど、巨大なスロットトレイは真っ先に削減対象となりました。
3つ目は、端末本体のストレージ大容量化とクラウドサービスの定着です。安価なミドルレンジ端末でも内蔵ストレージが128GB〜256GBを備えるのが当たり前となり、Google OneやiCloudなどのクラウド保存が一般化しました。その結果、メーカー視点では「物理microSDスロット自体への需要が減退した」と判断されているのが現状です。