看護学生や新人看護師が術後病棟に配属された際、最も戸惑うのが「教科書通りの日数で患者の病相が進まない」という臨床の現実です。SNSや看護系コミュニティでも「ムーアの分類の日数は覚えたのに、現場の患者に当てはめられない」という声が多く見受けられます。
現代の周術期医療では、腹腔鏡下手術やロボット支援手術などの低侵襲手術が標準化しています。これに伴い、従来の開腹手術をベースにしたムーアの分類に比べ、第1相(傷害期)が術後24時間以内に短縮し、翌日には第2相(転換期)へ移行するケースが珍しくありません。
さらに、術後回復強化プロトコル(ERAS: Enhanced Recovery After Surgery)の普及により、術後早期からの飲水・経口摂取再開、早期離床、過剰な輸液制限が徹底されています。これにより、古典的な第1相の麻痺や浮腫が大幅に軽減されています。
現場の実務では、日数という表面的な数字にとらわれるのではなく、「炎症反応(CRPや体温)の推移」「尿量の自発的増加」「排ガスの有無」「離床意欲」といった複合的な生体サインから現在の病相を逆算してアセスメントする臨床推論力が求められています。