難波八阪神社の主祭神は、素盞嗚尊(すさのおのみこと)、奇稲田姫命(くしいなだひめのみこと)、そして八柱御子命(やはしらのみこのみこと)です。素盞嗚尊といえば、出雲の国で人々を苦しめていた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治した日本神話屈指の武勇を誇る英雄神。この武勇と厄払いの神徳が、難波の地で「勝負に勝つ」「悪疫を退散させる」という強力な勝運・金運信仰へと昇華しました。
その歴史的証左となるのが、毎年1月の第3日曜日に執り行われる「綱引神事(つなひきしんじ)」です。この神事は、素盞嗚尊がヤマタノオロチを討ち取って民の困窮を救った故事に由来し、大綱を大蛇に見立てて引き合う勇壮な祭礼です。昭和49年に大阪市で第1号となる「無形民俗文化財」に指定され、地元住民と商業者たちによって代々大切に継承されてきました。
長年この神事を記録し続ける民俗学研究者は「綱引きで大蛇を断ち切る行為は、共同体の災厄を払拭し、新たな生命力と富を呼び込む再生儀礼である」と分析します。現代においても、ビジネスの成功や起業の命運を賭ける経営者、試験合格を目指す受験生、プロスポーツ選手がこぞって参拝に訪れる背景には、数百年以上にわたり蓄積された本物の祈りの土壌が存在します。