ネット上で「点鼻薬依存」「ナザール中毒」と表現される状態は、医学的には「薬剤性鼻炎(点鼻薬性鼻炎)」と診断される確立された疾患です。決して本人の意志が弱いからではなく、薬理作用によって物理的に鼻粘膜が不可逆的な肥厚を起こしている状態を指します。
薬剤性鼻炎に陥ると、鼻呼吸が完全に遮断される激しい閉塞感に襲われます。息苦しさから逃れるために再びスプレーを吹きかけると、一時的に数十秒だけ開通するものの、すぐに元の重度な鼻づまりへと逆戻りします。この恐怖感と窒息感から、常にポケットや枕元に点鼻薬を常備しなければ不安になる心理的・身体的依存性が形成されます。
また、長期連用による副作用は局所的な鼻づまりの悪化にとどまりません。鼻粘膜の繊毛運動機能が破壊されて乾燥・刺激感・出血(鼻血)を招くほか、血管収縮成分が体内に吸収されることで、血圧上昇、動悸、頭痛、不眠といった全身性の副作用を引き起こすリスクも潜んでいます。