「ころしのカレー」という看板を目撃した旅行者が、警察沙汰の事件や危険な裏稼業を連想してしまうのは無理もありません。しかし、店主や歴代スタッフがメディア取材や常連客との会話で明かしてきた真相は、おどろおどろしい推測を軽やかに裏切る、極めて人間味に満ちたものです。
このユニークな屋号の原点は、かつてマスターが営んでいたスナックやバーの時代にまで遡ります。若かりし頃、女性客を軽妙なトークと甘いマスクで魅了し「あの人は女殺し(女ごろし)だ」と周囲から冷やかされていた店主のニックネームが、やがて提供していた名物カレーの通称へと変化していきました。さらに、「一口食べれば誰もがイチコロになって虜になる」「あまりの美味しさに胃袋をわしづかみにされる」という、料理人としての自負と博多っ子特有のウィットに富んだ洒落が合わさり、現在の店名として定着したと伝えられています。
昭和から平成、そして令和へと時代が移り変わる中でも、筑紫野市二日市の街並みにしっかりと根を下ろし、看板を変えることなく営業を続けてきた同店。現在では「福岡のカレー文化を語る上で絶対に外せないディープスポット」として、テレビ番組やグルメ雑誌の常連となっています。恐ろしい名前の奥には、訪れた客を笑顔で満腹にして帰したいという、昔気質のあたたかなもてなしの心が息づいています。