歌麿の代表作群のなかでも、視覚的なインパクトと卓越した構図美で傑出しているのが『婦女人相十品 ポッピンを吹く娘』と『寛政の三美人(当時三美人)』です。
『ポッピンを吹く娘』は、市松模様のあでやかな着物を着た町娘が、当時流行していたガラス製の玩具「ポッピン(ぽっぺん)」を口にくわえて鳴らす一瞬を切り取った名作です。軽やかなガラスの音色が今にも聞こえてきそうな臨場感と、少女特有の無邪気な色香が同居しており、余白を広大に取った計算し尽くされた空間構成が見る者の視線を娘の横顔へと強烈に誘導します。
一方、『寛政の三美人』は江戸中で話題を呼んでいた実在の美女3人を一枚の画面に集結させた、まさに元祖アイドルユニット絵です。描かれている女性たちの顔触れと素性は以下の通りです。
この作品では、3人の顔を絶妙な正三角形の配置に収めることで安定感を生み出しつつ、それぞれの女性が向く角度(右向き・左向き・正面)を変えることで、単調さを排除したダイナミックな群像劇に仕上げられています。