2010年代後半を席巻したタピオカブームと、今回の騒動を分かつ決定的な境界線は何か。それは消費者が求めているのが、インスタグラムに投稿するための単なる「視覚的派手さ」ではなく、そこに付随する「物語への参加権」であるという点だ。
音楽ユニットのMrs. GREEN APPLEが構築してきた、緻密で少し皮肉の効いたポップス美学。それが2026年という不確実な時代において、ある種の「安心感とエナジーの象徴」としてバナナというプリミティブな食べ物に憑依した。ファンコミュニティ「JAM'S」の結束力は、今や音楽ストリーミングの枠組みを飛び出し、実体経済をダイレクトに動かす巨大な実体へと成長している。
「グッズのアクリルスタンドを買うのとは、身体的な体験の深さがまるで違う」と、都内のクリエイティブディレクター(34)は分析する。「体内に取り込み、味覚と嗅覚で記憶を刻む。究極の没入体験(イマーシブ・エクスペリエンス)が、コンビニや専門店のカウンターで手に入ってしまう。この距離感のバグこそが、消費者を狂わせる仕掛けです」