『魔女の宅急便』の主題歌決定において、中心的な役割を果たしたのがスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏です。制作当時、スポンサーであったヤマト運輸との関係構築や、前作『となりのトトロ』『火垂るの墓』を超える商業的ヒットを目指していたジブリは、従来のファン層だけでなく「10代後半から20代の若い女性層」を劇場へ呼び込む強力なフックを求めていました。
鈴木氏は当時すでにニューミュージック界の頂点に君臨していた松任谷由実さんのコンサートへ足を運び、楽屋で直接オファーを敢行します。当初は映画のためのオリジナル楽曲制作も視野に入っていましたが、タイトな制作スケジュールや楽曲が持つ世界観の精査を経て、最終的に荒井由実時代の既存曲を活用するプランへと舵が切られました。
宮崎駿監督が本作で描きたかったのは、魔法というファンタジーの力ではなく、「田舎から上京して一人暮らしを始める少女が直面する挫折と自立」という普遍的な青春の痛みです。1970年代に都会の空気感や洗練された日常の機微を鮮やかに切り取ったユーミンの楽曲は、思春期特有の孤独感や背伸びしたい憧れを表現するうえで、これ以上ない最適解でした。