日本の祭りは大別して二つの切実な動機から育まれてきた。一つは秋の恵みに感謝し五穀豊穣を祈る農耕無事の儀式。もう一つは、夏場に蔓延する疫病や天災を鎮めるために執り行われた御霊会(ごりょうえ)だ。
その筆頭が千年以上の歴史を紡ぐ京都の祇園祭である。9世紀後半、平安京を襲った大疫病を退散させるべく、当時の国数に応じた66本の鉾を立て、神を迎えて祈りを捧げたのが始まりとされる。華麗な山鉾巡行の美しさの陰には、目に見えぬ恐怖と闘い続けた先人たちの鬼気迫る情熱と知恵が凝縮されている。祭礼の本質とは、災厄に対する人類の抵抗と再生の証なのだ。