体臭に対する社会的な許容度は、年々狭まり続けている。職場や公共空間における体臭が他者に不快感を与える現象は「スメルハラスメント(スメハラ)」と呼ばれ、厚生労働省が策定する職場環境改善の文脈でもハラスメントリスクの一環として議論される場面が増えた。
この社会的緊張を背景に、パーソナルケア・デオドラント産業は空前の技術革新期を迎えている。単に強い香料で悪臭を覆い隠す旧来のマスキング手法は姿を消し、皮膚マイクロバイオーム(常在菌叢)を精密に制御するアプローチが主流となった。
長年にわたり男性の汗や皮脂のメカニズムを解析してきた株式会社マンダムは、頭皮臭やミドル脂臭の原因菌を特定し、その代謝経路を直接阻害する成分の開発に成功。一方のロート製薬株式会社は、年齢とともに減少する女性特有の甘い香り成分「ラクトン」に着目し、加齢臭を抑えつつ若々しい香気プロファイルを補うという革新的なアプローチで市場を塗り替えた。日本の消臭技術は、今や世界で最も精緻かつ局所的なアプローチへと進化している。