飛び地が発生する要因は、北山村のような河川交通や経済圏の事情にとどまらない。人文地理学の視点から日本全国の事例を分析すると、江戸時代の複雑な領有形態や、明治以降の「平成の大合併」に至る自治体統合の摩擦など、様々な歴史的背景が見えてくる。
地理学者であり地図研究家として知られる今尾恵介氏は、日本の土地利用と境界の形成について、入り組んだ旗本領や寺社領の存在が現代の境界線にも色濃く影を落としていると指摘する。江戸期における細切れの領地支配(相給や飛領)が、明治の町村制施行時にそのまま自治体境界として固定化されたケースは少なくない。また、近代における用水路の水利権や山林採草地の所有権をめぐる村同士の相克が、譲れぬ一画として「飛び地」のまま現代に残された例も存在する。